マイニングは、もはや専用機で行う時代です。それが、ASIC(エーシック)であることは、クリプテック読者ならびにマイニング中級、上級者には当たり前かと思われます。
そこで、今回はASICの中国事情をチェックしてみようと思います。中国の動きはどうなっているのかがわかれば、よりマイニングの知識が増えて仮想通貨を楽しめますね。
半導体動向は中国勢が独占状態
中国はとにかく半導体製造の追い上げが著しく、同時に品質も上がっています。少し前までは、安かろう悪かろうの代名詞だった中国製品。しかし、IBMのレノボが中国に売り払われたり、中華系パッド(タブレット)や、家電製品が世界を席巻したりなど、中国の半導体製造のクオリティは格段にあがっています。
これがムーアの法則でもあり、半導体は価格そのままにどんどん品質とスペックが高まってくのです。この流れはもう止めることができません。
国債統計・国別統計専門サイトのグローバルノートの資料によると、国別半導体製造ランキングで1位になっているのは圧倒的に中国です。2位がアメリカ、3位に台湾がつきます。そして韓国が4位で、日本は5位に沈んでいます。
これはものづくり日本が凋落したと悲劇的に取る向きもありますが、率直にいって、技術はお金で買えるものなので、日本は高付加価値の仕事に舵を切るべきですね。
このリサーチをみても分かる通り、日本は大きく差をつけられています。生産力がそもそも違うので、比較しても仕方ありません。
ASICの分野でも中国(BITMAIN社)は圧倒的
この爆発的な生産力向上を背景に、中国はASICの分野でも圧倒的な独占状態となっています。リードしているのは中国企業BITMAINです。AntMinerというシリーズは、市場でとても高い人気を誇っています。
BITMAIN社は、AntMinerシリーズを出しているぐらいですから、マイニングそのものにも力を入れています。BITMAIN社では、マイニングプールも持っていますし、クラウドマイニングも実施しています。
仮想通貨事業にいち早く参入し、2013年にはもうビットコイン事業に手をつけているのですから、いかにして中国勢の情報が早く、そして敏感であるかがわかりますね。中国全土に店舗を展開するだけでなく、グローバル企業としても成長しつつあるのです。
中国のマイニング実績はASICによるもの
このASICマシンを製造販売しているBITMAIN社は、世界最大のASIC業者ですから、マイニング量も膨大なものです。BITMAINでは、AntPoolおよびBTC.comというマイニング専用の子会社を傘下にかかえています。
よってそのマイニングボリュームも凄まじいものとなり、世界のシェアでももっとも多くを占めることは想像に難くないことだろうと思います。
CPUマイニングもGPUマイニングも、計算能力ではASICに劣ってしまいます。よって、ASICを生産している中国、とくにBITMAIN社が破竹の勢いで伸びていることは、簡単に予想できますね。
しかも、中国がなぜこんなにマイニングに力を入れるかというと、そもそもの土地代と電気代が安いので、マイニングを実施、相場が低迷しても利益がどんどん出るという点です。それは、高コスト社会の日本で暮らしているとわかりづらく、見えづらいのですが、さらにコスト感に加えて気候の寒さがあります。
中国は、日本より赤道に近いところに位置するように見えますが、内陸部でロシアに近い地域では寒く、マイニングに最適です。つまり、コスト感、人件費、気候と揃っている上に、積極的にリスクを取って投資していくお国柄が合わさって、マイニングの世界で圧倒的にリードしています。
ビットコインキャッシュがもたらした中国マイニングの危機
しかし、順調なだけではありません。ハードフォークによって、ASICが使えなくなるピンチがあったのです。それが、SegWitを実装するかどうかというテーマについてです。ビットコインキャッシュは、取引ブロックサイズを小さく圧縮して、増えるビットコインの流通量をさばこうとしていたのです。
しかし、ビットコインの実装にSegWitが導入されると、今度はそれまでのASICが全部使えなくなってしまいます。なぜなら、ASICは、専用機であり、集積回路としてビットコインの採掘に最適化されたものだからです。
これは、経済的に著しい損失となります。中国製ASICのマイナーとしては、アルゴリズム変更によって、ASICがゴミになってしまうのを避けたいという思惑があります。もちろん、BITMAIN社にとっては、買い替え需要がありますから、ポジティブな反応をすることも考えられるでしょう。
このSegWit実装に関して、意見が対立したのです。その結果、ビットコインキャッシュがSegWit実装を反対するグループによってハードフォークされました。2017年8月の初日のタイミングです。
まとめ
このように、アルゴリズムの変更は、政治的な対立を招くことがあります。ビットコインの世界観と、現実のマイナーの利害。ビットコインが社会に広まるにつれて、どんどん利害関係が複雑になっていき、またビットコインやマイニングの世界は移り変わっていくのです。